身近な人が亡くなった際、遺族が最初に直面する重要書類が「死亡診断書」や「死体検案書」です。
名前は似ていますが、どちらが発行されるかによって、その後の警察の介入の有無や費用の負担が大きく変わります。

1. 死亡診断書と死体検案書の根本的な違い

この2つは法律上、同じ1枚の用紙(死亡届と一体化)にまとめられていますが、医師が「作成の根拠」によって使い分けます。

① 死亡診断書(しぼうしんだんしょ)

医師が診療を行っている患者が、その病気に関連して亡くなった際に発行されます。

  • 発行の条件: 継続的に診察していた病気での死亡、または入院中の死亡。
  • 作成者: 病院の担当医、主治医。
  • 死因: 老衰、病死(自然死)。

② 死体検案書(したいけんあんしょ)

死因が即座に特定できない「異状死」の際に発行されます。

  • 発行の条件: 事故死、自殺、突然死、孤独死、死因不明。
  • 作成者: 警察医、監察医。
  • 死因: 外因死(事故・自死)、不詳の死。

2. 【状況別】どちらの書類になるか決まる「24時間の壁」

実は、医師には「24時間以内に診療していれば死亡診断書を書いても良い」というルール(医師法20条)がありますが、ここには誤解も多いです。

  • 24時間以内に受診していた場合: 持病に関連した死亡であれば、医師が対面で死亡を確認するだけで「死亡診断書」が発行されます。
  • 24時間を超えていた場合: たとえ持病があっても、改めて医師が「その持病による死亡」と確信できなければ、警察への届け出が必要になり「死体検案書」に切り替わる可能性があります。

3. 費用相場の大きな格差(5倍以上の差が出ることも)

ここが最も遺族を驚かせるポイントです。「死体検案書」は、死亡診断書に比べて圧倒的に高額になる傾向があります。

項目死亡診断書死体検案書
書類作成料3,000円 〜 1万円3万円 〜 10万円
追加費用特になし検案料(往診代)、遺体搬送代、安置料

なぜ死体検案書は高いのか?

警察が自宅まで足を運び、事件性の有無を判断するための「検案」という特別な作業が発生するためです。
また、検察医制度がある地域(東京23区や大阪市など)では「行政解剖」が行われることもあり、その場合の手続きや搬送にも費用がかかる場合があります。

4. 自宅死・孤独死の際の「NG行動」と「緊急対応」

自宅で家族が倒れているのを発見した場合、パニックになりますが、以下のステップを厳守してください。

① 遺体には絶対に触れない、動かさない

死後硬直の状況や周囲の遺留品は、警察にとって重要な情報です。

  • NG例
    布団に寝かせる、服を着替えさせる、周囲を掃除する。 これらを行うと「事件性の隠蔽」を疑われ、検視作業が大幅に遅れる(最悪の場合、事情聴取が長引く)リスクがあります。

② 連絡先の優先順位

  1. 主治医がいる場合
    まず病院へ電話。医師が「すぐに行きます」と言えば警察を呼ばずに済む可能性があります。
  2. 主治医がいない場合
    110番(警察)へ。救急(119番)を呼んでも、死亡が確認された時点で警察が呼ばれます。

③ 警察による「検視」の流れ

警察が来ると、現場の状況確認と家族への聞き取りが行われます。

  • 所要時間
    通常1〜3時間程度。
  • 預かり
    遺体は一度、警察指定の安置所や病院へ運ばれることが多く、その間は遺族でも対面できない時間が発生します。

5. まとめ:遺族が後悔しないための備え

  • コピーは最低10枚取る
    原本は市役所に提出して戻ってきません。
    保険金の請求、銀行口座の凍結解除、不動産の名義変更などで「写し」が大量に必要になります。
  • 費用の領収書を保管する
    死体検案書にかかった費用は、相続税の控除対象になる場合があります。